10月31日、日銀の植田和男総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、今後、経済・物価情勢の見極めなどについて「時間的な余裕はある」という表現は使わないと説明、毎回の決定会合までに入ってきたデータや情報に基づいて判断していくと述べた。日銀の経済・物価見通しが実現していけば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と語った。
概要
• 日銀の発言が市場ではタカ派と捉えられ、利上げの可能性を示唆したことで円高が進行。植田総裁の発言を受け、年内の利上げも視野に入れ始めました。
• 円高が進む中で日本株の上値が重くなる可能性があるものの、今後の株価は米国の大統領選や経済状況など外部要因にも左右されると予想されています。
• 米国市場では、選挙前の不安感が広がる中、ハイテク株が売られ、投資家がポジションを調整する動きが見られました。これが円の安全資産としての需要を高め、円高の要因となっています。
• 米国の大手ハイテク企業であるアマゾンとアップルの好決算が発表される一方、メタやマイクロソフトの低迷により、ハイテクセクター全体に重しがかかり、市場全体が不安定な状況にあります。
• 米大統領選や金融政策の行方によって、円高傾向や株式市場の動向にさらなる変動が予想されており、投資家は慎重な姿勢を保っています。
日銀の金融政策とタカ派寄りのトーン
日本銀行(以下、日銀)はこれまで慎重な姿勢をとってきましたが、今回の会合でややタカ派寄りのトーンを見せました。特に、植田和男総裁の発言で、以前から使用していた「時間的余裕」という表現を不要としたことが、注目を集めました。
これは米国の経済指標が良好な結果を示していることを受けての判断であり、市場はこれをやや強気(タカ派的)と受け取っています。当初、市場の一部では「今回の会合ではハト派的なコメントが出るのではないか」という期待もあったため、予想とは異なる日銀の姿勢により円高方向への動きが見られました。また、今回の会合で年内に追加利上げの可能性が示唆されたことで、市場の一部では「来年1月から3月に予定されていた追加利上げが、もしかすると年内に実施されるかもしれない」という見方も強まりました。これにより、為替市場では円が買われて円高に進み、日経平均先物も下落しました。
円高による日本株の短期的な影響
こうした円高の進行により、日本株は短期的には上値が重くなる可能性があります。ただし、日本株は米国の影響を強く受けるため、日本国内の要因だけでなく、米国の出来事も重要です。

特に、来年の米大統領選が大きな注目点であり、選挙後には不透明感が解消されることで、日経平均株価も上昇基調を試す展開が期待されています。今の水準から見ると、日経平均が年初来高値の4万2000円台にはまだ距離がありますが、4万円台を目指す動きも視野に入れているとの見方があります。
米国市場のハイテク株低迷と投資家のポジション調整
一方、米国市場ではハイテク株の低迷が見られ、木曜日のウォール街でも売りが優勢となりました。これは、選挙前の不安感から、投資家が週末を前に利益確定やヘッジのためにポジションを整理する動きが見られるからです。
過去のデータからも、大統領選前の金曜日には米国とアジアの株価指数が下落しやすい一方、ヨーロッパの株価指数は上昇する傾向があるとされています。このため、為替市場でも円が買われる傾向が強まり、円高が進行しました。
米国ハイテク企業の決算と市場の緊張感
木曜日には、アマゾンやアップルといった大手企業が四半期ごとに予想を上回る売上を発表しましたが、メタ・プラットフォームズ(旧Facebook)やマイクロソフトが軟調に推移し、ハイテクセクター全体に重しがかかりました。加えて、ウォール街全体には選挙に対する緊張感が漂っており、その影響でナスダック100先物は8週間で最大の下落幅となりました。また、S&P500先物も下落し、取引を終えました。特にナスダックは重要な水準である2万ドルにとどまっていますが、この水準を維持できるかが焦点となっています。オーストラリアのASX200先物(SPI200)は「ヘッドアンドショルダー」という下落傾向を示す形状を形成しつつあり、7900ポイント付近の下値目標が見込まれています。
円買いの進行と今後の市場の動向

このように、米国市場のセンチメントが不安定な中で、円が安全資産として再評価され、日銀の政策後も円買いが続きました。今後の米大統領選や金融政策の動向によって、円高傾向や株式市場の動向にさらなる変動が見込まれるでしょう。