概要
1. 米ドル指数の強気転換と影響
米ドル指数は3日間の弱気リトレースメントを経て強気の兆候を示しており、さらなる上昇が期待されています。FRBの利下げ期待の減少やテクニカル指標に基づき、ブレイクアウトが視野に入っています。
2. 主要通貨ペアの見通し:EUR/USDとUSD/JPY
ユーロは米ドル指数の上昇を背景に1.05を割り込むリスクが高まっており、さらなる下落の可能性が指摘されています。一方で、USD/JPYはMOFの円買い介入やリスクオフムードの影響を受け、154.00付近まで下落するなど、不安定な動きを見せています。
3. インフレと中央銀行政策の影響
グローバルインフレの高まりを受け、各国中央銀行の政策が注目されています。FRBは利下げペースを鈍化させる姿勢を見せる一方、BOJは慎重な政策運営を続けています。英国やカナダでもインフレデータが予想を上回り、今後の経済リスクが懸念されています。
米ドル指数の動向と強気の兆候
米ドル指数(DXY)は、3日間の弱気なリトレースメントを経て、再び強気の勢いを取り戻しつつあります。この動きは、ドルのさらなるブレイクアウトの可能性を示唆しています。水曜日には、ドルが力強く上昇し、3日間続いた弱気の流れを断ち切りました。この背景には、連邦準備制度理事会(FRB)による金利引き下げ期待が減少していることが挙げられます。12月に25ベーシスポイント(bps)の利下げが実施される確率は、わずか1週間で約82%から52%に低下しています。
ドル指数の日足チャートでは、複数の強気反転パターンが確認されており、週のピボットポイント付近で底堅い動きを見せています。107を超えるブレイクアウトが実現すれば、さらなる上昇が見込まれ、108の水準に到達する可能性があります。ただし、RSIの弱気ダイバージェンスには注意が必要で、初期の誤ったブレイクアウトや不安定な取引が続く可能性も考えられます。
ユーロ/米ドル(EUR/USD)の見通し
ユーロ圏では、ロシア・ウクライナ紛争やトランプ前大統領が提唱する関税政策がリスク要因として浮上しており、EUR/USDが1.05を割り込む可能性が高まっています。米ドル指数の約57%を占めるユーロの下落は、ドル指数のさらなる上昇を後押しするでしょう。2023年の安値である1.0450付近が次の焦点となり、これを割り込むとさらなる弱気な展開が予想されます。
米ドル/円(USD/JPY)の動向
一方で、米ドル指数における日本円のウェイトは約14%と低いため、ドル指数の上昇がそのままUSD/JPYの強気ブレイクアウトにつながるとは限りません。最近では、日本の財務省(MOF)が円の買い支えを行い、USD/JPYは一時的に高値から約300ピップス下落しました。このため、トレーダーはMOFの介入を警戒しており、大幅なブレイクアウトには慎重な姿勢を見せています。
木曜日の取引では、USD/JPYは154.00付近まで下落しましたが、これはドル指数が上昇した状況でも発生しました。現在のドル高傾向にもかかわらず、円のリバウンドやリスクオフムードによってドル円が一段と下落する可能性もあります。テクニカル的には、156.80を超える動きが確認されない限り、強気のブレイクアウトとは言い難い状況です。
インフレと中央銀行政策の影響
米国では、FRBがデータ依存型の政策運営を強調しており、利下げを急がない姿勢を見せています。一方、トランプ氏が提唱する最大60%の輸入関税がインフレを再燃させる可能性が指摘されています。12月の25bps利下げ確率は1週間前の72%から56%に低下しています。FRBが12月の会合で政策緩和を一時停止する可能性も予測でき、インフレ率がさらに上昇するリスクを指摘しています。
また、日本銀行の上田和夫総裁は、政策金利に関する柔軟な姿勢を示しつつも、利上げに対して慎重な立場を維持しています。上田総裁は、「データに基づいて会合ごとに判断を下す」とコメントしており、日本円の動向にも影響を及ぼしています。
グローバルインフレと今後の展望
グローバル市場では、英国やカナダのインフレデータが予想を上回り、各国の中央銀行が利下げペースを鈍化させる可能性が浮上しています。英国のインフレデータは、イングランド銀行の政策変更に影響を与えるだけでなく、来年に向けたインフレ率の上昇リスクを強調する結果となりました。金曜日のフラッシュPMIレポートがさらに強い結果を示せば、グローバル経済への影響が一層注目されるでしょう。
米ドル指数のさらなる動きや各国中央銀行の政策変更が市場の方向性を決定付ける中、短期的な調整と長期的なトレンドの両方を見極めることが重要です。